ベトナムのビジネスエチケット

ベトナムは東南アジアで最も古い文化を持つ国の一つです。ベトナムの歴史を考慮するとこの国のアイデンティティは複雑ですが、ベトナム人は自分たちの言葉や社会、文化における特徴を誇りに思っています。たとえば、「dat viet」(ベトナム語で土地という意味)という表現は、ベトナムの社会が地球環境と有機的な関係を持っているという概念に由来します。

1980年代にドイモイ政策が施行されて以来、ベトナムは社会主義経済から市場経済へ移行し、国内の生活水準の向上など、多くの大きな変化がありました。これらの要因によって、国内事業の新規開拓または拡大を目指す外国企業が次々に現れました。

ベトナムの文化や伝統に関して調査をすることは、ビジネスの円滑な運用に極めて効果的で重要な要因です。本記事では、ビジネスにおけるベトナムのマナーを紹介していきます。

ベトナム式の挨拶

近年、ベトナムでも英語を話す人口が増えつつありますが、ベトナム語は依然として公用語であり、人口のうち約86%がベトナム語を使用しています。ベトナム人は、外国人がベトナム語で「こんにちは」を意味するxin chao(「seen chow」と発音します)などの簡単なフレーズを自分の言葉で伝えると、とても好印象を受けます。

握手とお辞儀は、こんにちはとさようならを言うための一般的な習慣です。ベトナム語の名前は、姓、ミドルネーム、名の順に記述されるので、自己紹介の際には注意してください。

ビジネスエチケット101

可能であれば、ビジネスの会議は通訳者を同席させることをお勧めします。会議で商談が決まらない場合もあるので、他の会議に出席する準備もしておくと良いです。また、オンラインの会議やメールでの取引よりも、直接合って話す方が効果的なケースが多いです。

ベトナムでは、電話での新規開拓などはお勧めできないため、知人やつながりのある人から紹介を受けることがビジネスを拡大するカギになります。また、商談の予定は事前に調整しておき、テト(旧正月)などの祝日は避ける必要があります。

初めて会うビジネスパートナーの場合、相手のオフィスで会う方が無難です。この場合、相手が直前に予定をキャンセルする可能性を回避することができます。

名刺を渡す時は両手で持ち、相手から受け取った名刺の名前をよく読んでください。この時に受け取るだけでよく見ずにしまってしまうと印象が損なわれます。相手に渡す名刺はできれば英語とベトナム語両方の記載があるものが好ましいです。

訪問をした際にお茶などが出された場合は、先方の気遣いなので遠慮なくいただいてください。ベトナムでは北部では温かいお茶、南部ではアイスティーやソフトドリンクが出される場合が多いです。

会議の議題はあらかじめ用意してき、先方が理解しやすいようにしておきます。また、すべてのドキュメントをベトナム語に翻訳することもお勧めです。

会議中に沈黙になることは普通であり、先方が議題に関してについて考えていることを意味します。相手の話を遮ったり否定することは失礼にあたるため、避けるようにした方が良いです。

ベトナムでは年功序列と職位が重要とみなされています。たとえば、先方に渡す名刺は、最年長の人に先に渡すことで、敬意を示すことができます。

先方が「はい」と言った場合でも、実際の合意ではなく、単に理解を示すだけの場合があります。取引に同意したかどうかを理解するには、取引全体の流れを細かくフォローして、ビジネスパートナーに随時確認を行うことをお勧めします。

通常、会議の終了を知らせるのは訪問者の責任です。最初の会議からはビジネスレベルに発展する傾向がある西洋の文化と比較し、ベトナムでのビジネスは最初の数回の会議はお互いを知ることからはじまります。ベトナム人は社会的なつながりを重視するため、相手方とのコミュニュケーションがどのように測れるかによってビジネス上の決定が左右される可能性があります。

ベトナム人はビジネスの場でも、外国人にとって個人的な内容であると感じる質問をします。例えば、会議の場で家族や私生活に関する内容に関して話すことも普通に行われ、親しみやすさと関心のしるしと考えられています。

また、商談の最後にお土産を渡すことも一般的です。高価なものである必要はないですが、会社のロゴが付いたペンや文房具、または日本をイメージしたアイテムなどが好まれます。

ビジネススーツ

ビジネスの場での服装は、商談の場所によって好まれるスタイルが異なります。たとえば、ハノイではビジネススーツなどが無難ですが、ホーチミンシティはビジネスカジュアルが好まれます。

通常、ビジネスの場では明るい色を避け、控えめな服装をする必要があります。男性であればスーツが適していますが、女性はスカートやブラウスの着用でも問題ありません。

ベトナムでは通常、月曜日から金曜日の午前8時から午後5時までが出勤時間とされています。

「建前」の概念

他の多くのアジア諸国と同様に、ベトナムでも「建前」の概念は非常に重要です。欧米では、率直で直接的に相手と関わることは良い傾向であると考えられていますが、ベトナムでは直接の意見の相違や公の場での質問の提起は、「建前」を損なう行為である考えられます。ベトナムでの「建前」とは、その人の評判、尊厳、名声に関する概念です。外国人がベトナム人と関わる際には、自分の言葉や行動により意図せずに相手の建前を損なう可能性があることに注意する必要があります。そのため、ビジネスパートナーを尊重してコミュニュケーションを行うことが重要です。

ビジネスにおける飲食の機会

ベトナム人の家にゲストとして招待された場合は、果物、お菓子、花、または線香などの手土産を持参されることをお勧めします。この際にハンカチ、黒色または黄色の花、菊などは避けるようにしてください。なお、振る舞われた料理は遠慮なくいただいて問題ありません。また、料理をいただく前には、ホストが食事から「どうぞ」と言われるまで待ってください。可能であれば、出された料理は完食した方が良いです。

レストランでは、年長者から着席し、何かを持つ時は必ず両手を使ってください。この時、誰かの頭の上を通してものを渡すことはしないでください。レストランで支払いをする場合は、慣例ではありませんが、5〜10%のチップを支払った方が無難です。

安全性

ベトナムの治安は比較的安全ですが、ハノイやホーチミン市などの主要都市をビジネスで訪れる場合は盗難などの軽犯罪に注意する必要があります。

貴重品がある場合はホテルの金庫に保管し、携帯電話や財布は目立たないようにしまってください。特に観光地ではスリのリスクを最小限に抑える必要があります。警察は外国人の親身になって相談に乗ってくれますが、必ずしも解決に至るわけではないので、自己防衛を怠らないことが大事です。

また、市内でのタクシー詐欺(欠陥のあるメーターの使用や、目的地までの経路が長いなど)も発生しています。ビジネスで訪れる場合は、ホテルでの交通手段を予約するか、マイリンタクシー(緑色の車体)やビナサンタクシー(白と緑と赤のストライプのデザインがされた車体)などの登録済みタクシーを利用してください。